——AMEH白書 補論

砂田誠(Office TEAM101) 2026年


本稿はAMEH(適応的市場エネルギー仮説)白書の補論である。

白書と同じく、これは仮説に基づく構造的考察であり、学術論文ではない。

本稿のいかなる記述も、特定の金融商品の売買を推奨するものではない。

また、インデックス投資を選択する個人を批判するものでもない。

批判の対象は、構造的根拠が曖昧なまま「最適解」を売り、検証不能な時間構造で免責される座組である。


第1章 平均とは何か(3つの平均)

「平均に回帰する」——mean reversion。効率的市場仮説(EMH)を支持する者たちが好んで使う言葉だ。市場価格は短期的に適正価値から乖離しても、長期的には適正価値に収斂する。だから市場は効率的だ、と。

しかし、ここでまず言葉を分けておく必要がある。平均には、少なくとも三種類ある。

(1)サンプル平均(後から計算される平均)

過去のデータを集めて、後から計算した平均。10個の価格を足して10で割る。移動平均線もここに属する。これは計算結果であって、市場のどこかに実体として存在しているわけではない。

(2)期待値(理論上の平均)

確率過程として仮定されたモデルが持つ「長期の平均」。理論の内部に存在する“想定上の平均”である。

(3)均衡点(その時々の拮抗点)

AMEHの言葉で言えば、PE(正のエネルギー)とNE(負のエネルギー)が一時的に拮抗し、Vo(放出されたエネルギー)が減衰して落ち着く地点。これは毎回同じ場所とは限らない。むしろ、その都度違う。

本稿が問題にしているのは、主に(1)サンプル平均や移動平均が、あたかも市場の外部に存在する固定点(目的地)であるかのように扱われる点だ。

平均は常に事後的に算出される。新しい価格が生まれるたびに平均は再計算される。価格が大きく上がれば平均も上がり、大きく下がれば平均も下がる。