詐欺に遭う人が後を絶ちません。
「騙す奴が悪い」。 それは当然です。
でも、そこで思考を止めてしまっては、何も変わりません。
騙す側は、騙される人がいるから詐欺を働こうとするのです。 詐欺をなくしたいなら、騙す側を捕まえるだけでは足りない。 騙される側の心理──そこにこそ、本当の問題があります。
皆さん、本当のことを知りたいと思っています。 でも、本当のことを知る覚悟があるかと問われたら、どうでしょうか。
私はファイナンシャルアドバイザーを生業としています。 だからよく聞かれます。
「あの株は上がりますか」 「為替は円安になりますか」 「この投資信託は安全ですか」
まだ決まっていない未来のことです。 そんなことは、神様にもわかりません。 投資とは、自分の責任で行うものです。
ここで一つ、考えてみてください。
なぜ、私たちはタダで未来を知れると思ってしまうのでしょうか。 なぜ、気軽に誰かに正解を求めてしまうのでしょうか。
これは個人の性格の問題ではありません。 人間の脳に組み込まれた「認知の偏り」──行動経済学ではこれを認知バイアスと呼びます。
行動経済学が明らかにした認知バイアスの中で、特に投資判断を狂わせるものがあります。
損失回避バイアス。 人は利益を得る喜びよりも、損失を被る痛みの方を約2倍強く感じます(Kahneman & Tversky, 1979)。 だから「損をしたくない」という感情が、冷静な判断を上書きしてしまう。 「元本保証」「絶対に損をしない」という言葉に、つい引き寄せられてしまうのはこのためです。
現状維持バイアス。 変化を避け、今のままでいたいと感じる傾向です。 「よくわからないから、とりあえず今のままでいい」。 その「とりあえず」が、10年後の資産を大きく左右することがあります。